第四章 廃国置県
7 第三次世界大戦
いたずらに社会の不安を煽ろうとして第三次世界大戦などという言葉を用いるつもりはない。核兵器を持っている人類にとって第四次世界大戦はないと言える。第三次世界大戦は核戦争になることは必定であり、全人類の半数以上が死滅すると予測されている。この戦争だけは絶対に起こしてはならないのである。
しかしながら大国の調整など単なる人知では避けられないとされている。人類存亡の戦争であり、人類の叡智を結集しなければとうてい防げるものでない。叡智とは、深遠な道理を悟りうるすぐれた才知、と広辞苑には記されている。最近のニュースで報道された、西沙諸島の利権をめぐる中国とベトナムの衝突も大国のエゴである。国際社会において中小国はエゴを出しようがなく、大国のエゴに抗するため紛争や局地戦となるのがせいぜいだ。第一次、第二次の世界大戦も突き詰めれば、当時の大国のエゴによる戦争である。
現在の世界情勢で大戦の種や芽となりかねないものを列挙してみる。
一、ロシアと中国の指導者が覇権主義になっていること
二、アメリカのエゴによるアフガニスタン侵攻とイラク戦争が中東やアラブのイスラム教諸国に反米・反欧の憎しみの感情を植えつけたこと今でもアフガニスタンとイラクは混迷の状態にあり、それはエジプトやリビアなどのアフリカ大陸の諸国にも及びイスラム過激派の活動をかえって活発化させる結果となっている。何よりも問題なのは、子供に正常な教育がほとんどなされていないため、無知による憎しみの増幅が生まれやすい環境になっていることである。経済格差や貧困が常態化しているので、無知と怨嗟が渦巻き、一部の政治指導者に利用されるだけとなっている。日本の義務教育のような教育が施されたら、次第に改善されるはずであるが、その国に教育が委ねられていたのでは何年経っても無理であろう。
三、シリア内戦が続いていることに加えて、隣国イスラエルが核を保有し、イスラム教の大国イランが核開発を行っていること四、自由主義、資本主義貨幣経済の中で、大国は自国の発展と生存のために強いられた経済競争で、勝者にならざるを得ないという固定観念にとらわれていること以上の四点が大きく危惧されることと考えられる。世界のこれらの情勢は日々移り変わっており、その中で偶発的な局地戦が起こり、大国をして「生き残るために」と核戦争に踏み切らせる導火線にならないとも言えない。
これらのことをいっぺんに解決しようと思えば出来ないこともない。思い切って廃国置県を実施して世界国家を建設することである。大国が大国でなくなり、大小の国々が同じように地方となって共存共栄できることになる。第三次世界大戦を未然に防ぐ一番シンプルで簡単な方法と言える。
しかし、それは容易ではない。世界中の国家では、国民の多くはこの危機感を意識しえず、目前の生活に手いっぱいの状態である。資本主義・貨幣経済が国と個人それぞれのレベルで経済格差を生じさせ、拝金主義が正義のごとく人々の心の中に住みつき、あたかもソドム(※)の住民のように人心を荒廃させつつある。そこに叡智が入り込む余地はなく、意識のレベルは低いままの状態なのである。
※ソドム ヨルダンの低地にあったとされる伝説的な町。現在は死海南部に水没していると推定される。旧約聖書「創世記」によれば、ケダラオメルの連合軍に敗れたのち、道徳的退廃がはなはだしいため、天から硫黄と火によって滅ぼされた(「創世記」十九、二十四~二十八)。はなはなだしい罪悪とこれに対する神の処罰を示す言葉として用いられる。