新しい思想を創って新時代へ
宇宙空間にある人工衛星から地球を見ると、国境などなく人間がそこに住んでいるだけで、それが何人であり、どういう人種かまでは判別できない。「天」の視点で考えたら、人工衛星から見るのと同じように、「我」と「他人」を区別できないのである。地球は太陽系第三惑星である。この地球を宇宙からの視点で眺めてみよう。現在六十七億人の人間が住んでいる。五百年後、千年後の人類と地球の未来はどのようであろうか。六十七億人を一つの集団とみるとき、この集団の生きる目的は何であろうか。
現在この集団は民主主義・自由主義・資本主義という主に三つの考え方で運営されている。この考え方(思想)でよいのか。この考え方は停滞していないのか、これ以外のさらによい考え方はないのか。現在、この集団が抱えているさまざまな問題に取り組もうとするならば、基本的な考え方や運営方法を見直す時期にきているのではないかと思われる。「天(万物の創造主)」の目から見れば、地球という惑星で人類がこれほどまでに進化し発展したことはうれしいことであろう。天地創造の物語では人間は創造主に似せてつくられたという。
創造する力と自由意志を持つ人間の科学技術と経済活動は、とどまることを知らず急速な発展と拡大をし続けている。その中で貨幣は集団のすみずみまで行きわたり、その個人の生活を貨幣が支配している。人類がここまでの驚異的な発展を成し遂げたのも、貨幣という力と貨幣経済に基づく社会の仕組みのおかげであったことは確かである。二十一世紀のこの集団では貨幣はまさしく人体の血流のような存在になっており、一瞬たりと停止させることはできず、その流れを保つために国家や社会や個人は経済活動をしなければならない。貨幣という血流の停止は国家の破綻や個人の死に直結し、人間に与える恐怖は計り知れないのである。
そもそも貨幣は人間には単なる生活の道具であったはずだ。それが今や、人類という集団の活動を支配し、集団の単位である個人の日常生活も生涯も支配するに至っている。国家も国民から徴収する税という貨幣で成り立っており、国民一人ひとりの生活すべても貨幣に依存している。このため、この集団一人ひとりの想念は貨幣を安定して獲得するための仕組みづくりに向けられてきた。西郷は奄美大島に流されていたとき、お金を払えないため奴隷に身を落としていた人々を見てきた。西郷は心を痛めその解放にあたった。地球上では十億もの人々が飢餓の状況にあるという。日本でも貧困層が増加し国民の間で経済格差が拡大している。
一方では、十億人の飢餓を救えるだけの資金が戦争や軍事費や利殖のためにどんどん使われており、貨幣によって人類の道義が麻痺させられている状態になっている。貨幣が悪いということではなく、人間が貨幣のくびきから少しずつでも脱却できるような思想を模索すべきではないだろうか。人々に新しい意識(変化)が生まれれば、現在ある貨幣世界の意識も変化していくのである。