日本道義主義の会会長 早川幹夫
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一般社団法人アスリート工房代表 譜久里 武
子供たちに道義の心を伝えることでよい大人に育つ




全文掲載
今回は子供からお年寄りまで多くの人々に陸上競技を教えている「おっさんアスリート」譜久里さんと早川さんが現代の子どもたちが教育によって、素晴らしい将来の世界につながることを熱く語り合いました。
早川幹夫
日本道義主義の会会長。1948年鹿児島県奄美大島生まれ。拓殖大学卒。琉球大学文部事務官に就職。その後沖縄・東京で人材派遣会社を起業し、現在に至る。西郷隆盛の生き方に感銘を受け、混迷する現在の世界の政治と経済に道義主義を唱える。著書に「一箇の大丈夫 西郷吉之助」
「道義国家を目指した西郷吉之助」
「始末に困る人 西郷吉之助」などがある。
譜久里 武
1971年〈昭和46〉沖縄久米島生まれ。マスターズ陸上競技選手。40歳以上の日本人・アジア人で初めて100mを10秒台で走ったスプリンター。一般社団法人アスリート工房代表。沖縄大学客員教授。
マスターズ世界大会に挑戦
恩返しにアスリート工房を

20年前にある人を通して紹介いただき、お会いしたのが譜久里さんとのご縁でしたね。産業支援センターの派遣のお仕事をしていただきたいと思っていたのですが、その時に譜久里さんの履歴書を見てびっくりしました。
100メートルと200メートルで県内で10連覇と書いてありました。それを見た瞬間に連続で勝ち続けるのは難しい。勝ったり負けたりはあるけど、10年間、15年間という長い年月に同じ種目で勝ち続ける。
これは非常に素晴らしい人だと思いました。
そのころ譜久里さんはちょうど専門学校を退社して、フリーになっていると聞いたものですから、うちの会社で働いてもらった方がいいんじゃないかと話をしました。我々のところで、1,2か月働いていただき、半年後、グループ会社の沖縄コールスタッフサービスを創設したので、その社長になってもらった。それが最初のつながりでしたね。

そうですね。ちょうど32歳の時でした。専門学校に10年弱勤めていて、民間企業で働いてみたいなと思っていた時期でした。早川会長とお会いして、僕にとってもいろんな経験になるかなと。話しているうちに、学生サービスセンターのグループで新たに派遣会社を作ったのでそこの社長をしてくれないかと言われたので、すぐその日にやりますと言いましたね。
沖縄県を含めて全国的に雇用の問題とか貧困問題とかがありましたから、何かしら貢献したいなという思いもありましたので社長をさせてもらうことにしました。
早川会長の作ったその会社で、約7期ほど勤めましたが、その時に歴史だったり、経営のこととか早川会長には常にいろいろなお話を聞かせていただきました。早川会長自身もたくさん苦労されてお仕事されているということもお聞きしました。僕
自身も経営は初めてだったので、教えていただきながら、一緒に学び、経営させていただきました。
2013年に世界マスターズ陸上競技選手権大会がブラジルであったものですから。世界に挑戦しようということで、初めて挑戦しました。
その世界マスターズ大会で銀メダルを獲得することができたんです。
その大会が終わって、ブラジルから帰る時に夢が叶ったので今度は恩返ししようと考えました。その時から2か月後には子供たちや高齢者、障がい者も健常者も一緒の陸上スクールを作ろうということで設立したのが、一般社団法人アスリート工房です。今年で11年目になります。
そんな陸上スクールで基本にしているのが「道義」です。道義とは日本人のそもそも持っている倫理観や道徳観というものですね。
今の世の中でいうと個人主義だったり、スポーツだったら勝利至上主義にも通じると思うのですが、そういうものではなくて、心の部分とか道徳の部分が大事であるということを常日頃会長が仰っていました。僕自身もそこに共感していますから子どもたちに指導する際もそこを意識してやるようにしています。
子供がいい教育をうければ
将来はいい大人が増える

今戦争中のガザ地区では4万何千人かの死者の中で、子どもと女性が7割以上を占めます。この子どもたち。子どもは死ぬために生まれてきたわけじゃないですよね。
子どもはゼロの状態で生まれてきます。それも含めて、時代を担う子どもをきちっと教育して、良い人として成長してもらいたい。そのサポートをするのは大人の役目だと思います。
今は世界中で戦争が起きています。自由主義と民主主義が全てを形作っているけど、そこに道義という人の行いの正しい道の思想が必要だなと思っています。今は自由主義、民主主義だけです。自由主義、民主主義を唱え、何でもありになっているのです。
小さい子供の頃から、その人たちが大人になって、利他の心とか命の大切さを学んでそこに行動できる子どもがいたら違う社会になるだろうと考えています。
昔、私が2、30歳代の頃に、空手家の大山倍達の本を読んだことがあります。その中で、世界の指導者が小学校六年生のガキ大将だったら戦争はなくなると書かれていました。アホなことはやめたとなるんですね。
プーチン大統領も習近平もトランプ大統領も小学六年生。そしたら戦争なんかやらないわけです。
大人になって欲望とか利害が入ってくる。さらに自己顕示欲などが混じって戦争が始まります。
大山倍達のいうその面では、時代を担う子どもをしっかりと人の道、道義という概念で教育できたらいいと思います。

現在教えている子どもたちは沖縄県内で16カ所、神奈川県で一カ所です。トータル850名の子どもたちが在籍しているのですけれど、その中での教育理念は「剣禅一如」なんです。それは昔宮本武蔵さんがよく使っていた言葉で、剣は技を磨くこと、禅、心は一緒ですよということなのです。
強さを求めるだけじゃなくて、禅が大事ということを子どもたちには常日頃お話ししていまして、そこにやっぱり道徳観だったり、道義だったりが必要になるんです。
会長から常に教えていただいて学んでいることを子どもたちに分かりやすく伝えています。子どもたちは未来の宝です。その子どもたちがまた次世代を担っていくわけです。
スポーツを通して友だちと仲良くするとか、スポーツが苦手な人をカバーするなど、人として大事な部分をスポーツを通してしっかり子どもたちに伝えていきたいと活動しています。
今の世の中、情報が多い分、今度はしっかりとした情報を受け取り、情報に左右されない、頭が混乱しない子どもを作ることがすごく大事だと思っています。
SNSはもちろん、そのほかの情報もたくさんあるのですが、今大事なのはアナログ的な感じで、正面を見る、近くのお父さん、お母さん、親戚、チームメイト、そことのつながりをしっかり作ることが大事だと思います。
僕たちもこの体験、経験を通して、子どもたちにたくさん経験してもらって豊かな心を作ってもらいたいなとさまざまなイベントも開催して進めています。

人間は幼児がいて、少年、少女がいて、青年がいて、中年、老人となり、循環しているわけですね。
今の子どもたちにしっかり教育をすると、20年、30年後は教育された大人になるわけで、循環する可能性があるのです。
幼児教育をきちっとすると、その子どもたちは30年後には中年になります。こうしてひと回りするんです。
そうすると人類がいい方向に流れるんです。
それを国や政治がどこかできちっとやって、人類というかけがえのない存在をどう地球上で生かすか。そのためには幼児をきちっと教育することです。その幼児が30年経つと30代になる。このように次から次にやると、地球上の全てが素晴らしい人間になるんですよ。
スクールでは世代間の
コミュニティーが出来上がる

陸上スクールの一番小さい子は4歳です。一番上は80歳です。
中学生もいれば大人もいます。小学生は小学生のコースがあるんですが、中学生以上は大人も一緒にやっているので、みんなで仲良く世代間交流をしながらやっています。
中学生でも年配の方々に対してコミュニケーションをしっかり取れています。昔はそういうのがごく当たり前で、地域のコミュニティが自然にできていましたが、今はなかなかそのような機会がありませんね。
世代が違う皆さんが集まって、スポーツを通して楽しくおしゃべりしながらそれぞれ目標に向かっていくというのは、見ていてもほのぼのとしていい光景です。
そういったことが今の世の中で大事なコミュニティ形成の一つでもあるし、そういう経験をしている子どもたちはやっぱり年上の方に優しくできたり、年下の子に声かけしたりとか、ごく自然にできるようになる。
スポーツを通してそういう子に育ってほしいなと思ってやっています。

私たちは普段の生活で中学生と話すなんて全くないですね。私の個人的な考えですが、人間は年を取れば取るほど立派になったり利口になったりするわけじゃない。だから環境とか生きる目的とか、人生観とかが、大切なんだろうなと思ってい
ます。
年を重ねるだけで立派で、人間的に成長するんだったら戦争なんか起きないと思います。

スクールで学ぶ人はみんなそれぞれの目標がありますが、本当はあんまり変わらない感じはします。走るという共通言語を通して同スクールでは世代間のコミュニティーが出来上がる15じ趣味を共有しているので、年配の方は考え方が若くなるし、子どもたちは刺激を受けるし、子どもたちも大人と触れ合うことで将来ああなりたい、こうなりたいと刺激を受けているのですごくいい関係かなと思っております。
私たちはおじさんアスリートも育てています。おじさんアスリートというと、マスターズ陸上が近年盛り上がっております。僕ら50代の人間も元々陸上をしてない方でもやりたいという大人が増えてきたので、僕も同志を集めて、走るのが好きな人、やりたい人に声かけして、少しでも健康な体を長く維持できるような環境をつくりたいなと思って始めています。
今は僕のトレーニングの中では、20名くらいが同世代だったり、同世代のおじさんだけでなく、高校生が入ったりしています。

譜久里さんには教育を通して、一人ひとりが楽しい人生、素晴らしい人生を送れるような環境をつくってほしいなと思っています。
やっぱり子どもは国の宝です。宝を磨く、大切にする。そしてその人たちが満足のいける環境を作る。そういう意味では譜久里さんに政治家になってほしいと期待しています。

将来は分かりませんが、これからも子どもたちを通して早川会長がおっしゃっているように日本人にとっても大事な道義をスポーツ版として教えていきたいなと思っています。
これからは、子どもたちの問題もありますが、沖縄県は貧困問題だったり雇用問題だったり、課題がいろいろあります。僕たちはスポーツを通して、沖縄県民や子どもたちに素晴らしい環境を提供していきたい。
それから一人でも子どもたちの笑顔を増やしていくような活動をしながら、面白いイベント、たくさんの経験ができるイベントや教室を市町村と連携しながらやっていきたいですね。
夢ではありますが、将来は学校設立も視野に入れながら子どもたちと向き合ってこれからも過ごしていきたいと思います。

譜久里さんは2013年以後も世界マスターズ陸上競技大会で何度も金メダルを取り、世界新記録も出して沖縄では最強おっさんアスリートとして超有名人になりましたね。その姿を見た子どもたちも譜久里さんに憧れているんでしょう。
奄美の空手家で、非行少年を3万人更正させた三浦一広という人がいるんですが、立派だなと尊敬しています。三浦さんと話したのですが、今後も非行少年はどんどん出てくる。それには親を変えないとダメだと思いますと言っていました。
大人のエゴやわがままを変えなければなりません。子どもは親に殴られたり、いじめられたりするために、生まれてきたわけじゃ
ありません。親のエゴや愛憎でもって子どもが育てられてしまう。
そこで育った子供たちは非行に走る。非行少年はずっと出てくるわけです。だから大人社会を変える以外ないなと私は思います。
2025年の世界は子どもにとってよい環境がある年にしたいですね。
世界が平和になるには道義主義という人が行うべき正しい道の思想がどうしても必要です。現在に自由主義思想と民主主義思想のみでは戦争や紛争、そして個人間の争いも絶えません。最近シリア独裁政権があっという間に崩壊したことや3年になろうとするロシアとウクライナの戦争、そしてハマスとイスラエルの戦争など、このままだと第3次世界大戦になりかねない世界情況です。
道義という日本の長い歴史の中で日本人の心の中に息づいている、人が行うべき正しい道の概念を主義・思想として世界中に普及するべきです。このことは道義の概念を持っている日本国と日本人にしかできません。日本人の使命は非常に大きいのです。「天下布道」という言葉があります。世界中の国々に道義を普及しようという意味です。
世界を平和にすることができるのは我々日本人しかいないと、自信をもって、誇りをもって世界のために貢献すべきです。次世代を担う子供たちが安心で安全な夢のある生活ができるように道義を教育の中に取り入れて人として成長する教育をしてほしいと思います。
私たちも今年も道義を拡めるために頑張ります!