2021年秋号 エール 【西郷隆盛会館】内弘志×【日本道義主義の会】早川幹夫
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いまこそ西郷隆盛のような人が出てきてほしい
日本の政治、どうなってる? 西郷隆盛のようなトップリーダーが今いれば日本も国民も幸せになるのではないか?
西郷隆盛を尊敬する二人に今の政治と西郷隆盛の「教天愛人」の考え方について語っていただいた。
内 弘志 HIROSHI UCHI
1949年鹿児島県沖永良部島生まれ。15歳で上京。ガソリンスタンド、不動産開発会社、生命保険会社、金融会社などで働く。1990年、(株)ウチ・コーポレーション設立。2001年西郷隆盛に学ぶ「敬天愛人フィーラム21」を立ち上げる。2006年西郷隆盛会館開設。勉強会や講演会を行う。
早川幹夫 MIKIO HAYAKAWA
日本道義主義の会会長。昭和23年鹿児島県奄美大島生まれ。拓殖大学卒。琉球大学文部事務官に就職。その後沖縄。東京で人材派遣会社を起業し、現在に至る。西郷隆盛の生き方に感銘を受け、混迷する現在の世界の政治と経済に道義主義を唱える。著書に「―箇の大丈夫西郷吉之助」「道義国家を目指した西郷吉之助」「始末に困る人 西郷吉之助」などがある。
「敬天愛人」という言葉こそ包み込みの精神

内さんは西郷隆盛の生誕祭や「敬天愛人」フォーラムなどを長い間なさっていらっしゃいますね。

「敬天愛人」フォーラムは、“年前に始めました。その前は「敬天愛人の会」という鹿児島、奄美の大先輩たちが集まって、大田区の洗足池に勝海舟先生のお墓があるのですが、その隣に西郷さんの留魂祠がありますので、その一帯を掃除したり、そこで慰霊祭をしていました。
政治や、企業、官僚のやりたい放題を肌で感じて、「どうなる日本。どうする日本。今こそ西郷隆盛に学ぶ会」を立ち上げたのが、「敬天愛人フオーラム21」です。勉強会や上野公園の西郷隆盛の銅像の掃除を毎月したり慰霊祭や生誕祭をしています。
西郷精神を持った人が出てきて国のトツプになってくれればと思っているうちに早川さんに出会って、想いや方向性が同じだと感じました。
私が一番好きな言葉は、西郷隆盛の「敬天愛人」。この言葉は世界最強です。
反対できる人はいないんじゃないか。この旗を掲げて行動したいと思っています。

南洲翁遺訓を読んだときに、これは恐ろしい言葉だなと思いました。たとえば、わたしが内さんに300万を貸して、内さんが長く払わない。「敬天愛人」から言うと、天は人も我も同一に愛し賜うだから、これを実行するのは大変だと。しかし、数年たった時に、これは世界を包み込む思想だと思いました。どこを見ても世界を包み込む思想は葛ない。それを考えると、西郷隆盛の「敬天愛人」は包み込みの思想です。西郷隆盛は漢詩の中で、四海同胞という言葉を書いています。「四海同胞の真の意味を知ろうと思うのならば、万国の民に道義という人の正しい道を敷き、およぼせば、それが四海同胞になったのである」と。
日本は今危機的状況で、西郷隆盛が仮に生きていたらならば、道義国家を作れというんじゃないかと思って、私は道義主義国家を作るために沖縄から東京まで来ました。
西郷隆盛のような人が10 0人いれば国は変わる

政治のトップリーダーがいいとみんなが幸せになり、悪いとみんなが不幸になります。西郷さんが沖永良部島に流された時も島の役人に次のように残しているんですね。「良い役人は人の喜びを自分の喜びのように、悲しみも自分の悲しみのように許容できる」と。トップリーダーが悪いと台風のように乱れて不幸になる。だから平等に天道を行う。これが政治。「万民の上に位する者、己れを慎み、品行を正しくし、騎奢を戒め、節倹を勉め、職事に勤労して人民の標準となり、下民その勤労を気の毒に思ふ様ならでは、政令は行はれ難し」と言っています。ところが明治の初めから政治家は衣服を飾っており、西郷さんは「こんはずじゃなかった」と涙したんです。

たとえば安倍さんが朝から晩まで働いて、給料が20万。周りの人が「安倍さん大変ですね、私たちには真似できない、官邸に寝泊まりして、頭が張り裂けんばかりに思い悩んで、次から次へと策を打つ。一生懸命国を思って、このような人を見習うべきだ」と気の毒がってお礼する。そこに付度はありません。
今は気の毒がられる人はいないです。西郷隆盛のような人物がたくさん出るべきです。50人くらい出ると日本は変わりますよ。 一人しかいないと変人奇人扱いです。4、5人だと似た者同士が何ほざいているとなりますが、100人いると一つの判断基準になる。その意味では同じ志の人達を100人集めたいなと思っています。

政治がもっと乱れれば、出てくるんじゃないでしょうか。明治維新の時もそうでした。
薩摩武士は悪いことを許さない。自分の悪いことがばれたら人前で腹を切る。それぐらいの衿持がありましたが、今は嘘をつくのが平気です。早川 明治政府の高官は主がいなくなつた大名屋敷に住み、美酒を飲んでいる。西郷隆盛は本当は違う国を作りたかったんだろうと思います。
政府高官たちが1年半かかけてアメリカからヨーロツパを回って帰らてくるわけです。そしたら、外国のものを真似始め、西郷さんの言っていることは古臭い、時代遅れだと。先進国のカルチャーショックがそのまま日本を作ってしまった。次は太平洋戦争でアメリカに負けGHQが日本に革命を起こしたわけです。選挙制度から教育、財閥解体など何から何まで。それが現在に至っているのです。1868年の明治維新から、1945年の敗戦まで77年。敗戦から来年までが7年なんです。だから154年間の半分が自分たちで作った国、半分がアメリカに作られた国。これを放っておくとこのまま100年アメリカの国が続くんじゃないかな。だからここで何とかしなくちゃならないという想いはあります。そうしないと吉田松陰や高杉晋作に申し開きできないですよ。
西郷隆盛=征韓論は間違いきちんと教えるべき

世の中を変えるには何か大きな力が必要だと思います。西郷さんは、明治維新の前に市民平等の社会を作るという目的があったわけですが、西郷さんが亡くなった後に政府は戦争して日本を作ってきた。西郷さんがいたら日清戦争も日露戦争もなかったと思いますよ。朝鮮を支配しようという「征韓論」ですが、西郷さんは朝鮮とも中国とも仲良くして、そして西洋に対峙するというのが目的でした。今の学校教育では、西郷さん=「征韓論」ということになっています。当
時は朝鮮で、韓国という国がないのに、「征韓論」って言うのはおかしいです。
西南戦争でも西郷さんが反乱を起こしたというなら上野に悪い人の銅像がありますか。

日朝修好条規という条約は、日本政府が江華島事件に端を発して、朝鮮に無理やり開港させたものです。幕府は日米修好通商条約を結ばされましたが、同じことを朝鮮にもやっているじゃないか、道義のかけらもない。弱い奴には強く。強い奴には弱くという欧米の真似をしただけじゃないかと西郷さんが嘆いたといいます。

学校でちゃんと教えていないのが問題ですね。だから直せと何年か前に鹿児島県知事が出版社に言ったら2社ぐらいが動きました。

やっばり時の政府としては、政府にたてつくようなことを起こされてはいけないという恐怖感が、西郷隆盛を征韓論争で浮き彫りにしたんでしょう。

東京大学出版会が出した西郷隆盛の本で、仲良くするために朝鮮に行くんだというのが公文書で残っています。西郷さんは日本の歴史が作った武士道の第一人者です。
西郷さんは殿様の言うことを聞かなかった。だから島流しにされた。それでも懲りずに違うと言い続けた。敵からも好かれるのが西郷さん。こんな人物は世界中にいないですよ。
世界にナポレオンやワシントンなど偉人がいますが、西郷さんほどみんなのことを考えた人はいない。
あの上野の銅像も戦時中に壊されそうになったんですよ。あの坂本龍馬の銅像も渋谷のハチ公も壊され鉄砲の弾になってしまいました。でも上野の西郷像は残っている。敵国から見ても平和の人なんです。
同村光雲作の西郷像はすばらしい

「天と地」や「武将列伝」を書いた小説家・海音寺潮五郎が西郷隆盛のことを書き出しました。その動機が西郷隆盛はこのままだと後世に誤って伝えられるということでした。資料を集めて西郷隆盛伝を書いたんです。
しかし、9巻まで書いて、明治以降の分を書けずに途中で亡くなってしまったんです。海音寺潮五郎が著書に「上野の銅像は高村光雲の作で非常にいい」と書いています。
これが軍服姿や違う風貌ではこんなに評判にならなかっただろうと思います。この像を見て親族が本当の西郷隆盛とは違うと言ったことが知られていますが、高村光雲も親族に西郷隆盛とは違うと言われるだろうと分かって作ったのです。あの像は西郷隆盛の人となりを現わしているんです。上野の隆盛像は傑作です。着流しを着て、歴を出して、大を連れ、上野の山から東京を見下ろし、東京の安寧と、はるかアメリカを見ていると書いてありました。
もっと多くの人が西郷の哲学を学んで、自分を成長させるべきだと思います。本人の業績とは違う明るさや屈託のなさ。さすがは高村光雲。普通の彫刻家はあんな表現しないです。

高村光雲は銅像を作ったころは売れない木造の貧乏彫刻家です。それがあの銅像で、一躍有名になり全国から引っ張りだこになりました。西郷さんは色んな人を幸せにしているんですね。高村光雲は最初は木彫りで小さく作って、鹿児島の人に見せて、これでどうでしょうかと、それでどんどん大きくしていきました。当時、西郷さんを知る勝海舟も生きていて除幕式に参加しています。だからみんなが本物の西郷さんと違うとは言っていないのです。

西郷と勝海舟は心のレベルが同じです。お互い言葉を交わさなくても、分かっていたと思います。西郷隆盛、勝海舟、島津斉彬などが大学生だとすると、今の政治家は小学生です。信長の時代も秀吉の時代も国は乱れませんでした。幕末だから乱れたわけです。トップがちゃんとしていれば国が乱れることはないです。もし幕末に家康のような将軍がいたら、幕末はないわけです。
人材が尽きる時に国は乱れます、人間でも心身ともに疲れ切ったときに風邪を引くじゃないですか。日本人と日本の国が目覚めないといけないと思います。

今の政治はなってないです。「中国が危ない、北朝鮮が危ない」と言いながら、日本の水道運営の権利を外国に売っている。林業や農業も外国に解放している。戦闘機をいくら買おうがいいのですが、売らなくていいものを売っている。日本にゴールドマン・サツクスが銀行を作りましたが、これも外国の言いなりです。
税金は安く、困っている人々にお金を配れば国は豊かに

今コロナが警告を鳴らしているように思います。意思を持たないコロナが、人類という動物の在り方、生と死、人の成長を説いているような気がします。人間がどうあるべきかをもう一度社会の仕組みや経済活動から問い直すべきだと思います。

ワクチンだつて外国製です。日本製でもいいのがありますといっても、使わせないでしょ。外圧や利権に従っている。かかったら早期発見、早期治療が大事ですが、今は熱が出たら家にいなさい。悪くなったら保健所に言いなさいと。よく平気な顔して言えるなと思います。
私たちの勉強会では、遺訓集を読んで、今の世の中と比較しています。西郷さんは税金は安ければ安いほうがいい。国民生活を豊かにすることが国を強くすることだと言っています。だから増税なんかしてはいけないですよ。今困っている人を国が助けてあげるベき。お金は刷れるわけだからどんどんあげるべきです。

私が総理大臣でしたら、 一人百万円くらい渡します。その百万円は使われる。使ったことで市中にお金が回り、豊かになる。昭和の恐慌の時に松下幸之助が、町で出会った友人の金持ちに、「あんさんのような金持っている人ほど家を建てなはれ、車を買いなはれ」と言うんです。金持ちが家を建てると、大工さんの手間賃とか、電気工事、木材費とか、それぞれの手間賃や商品に回っていく。だから国として損はないわけです。

お金がない人に回したほうが経済が回る。コロナで死ぬのか、自殺で死ぬか。本来は国民を生かすための政府です。日本国民も政府を変える自覚を持つべきですね。

松下幸之助も無税国家を作るべきだと言つています。税金はピラミッドの時代から民衆から取るものと固定観念があるので、それを無税にして国家の運営を新たに考える。松下政経塾の本部には「無税国家」と書かれています。21世紀は無税国家、22世紀は「利益分配国家」と言っています。
道義主義の会のパンフレツトに私も無税国家と書きました。少子化の問題でも安心して出産できるように費用を多く補助し、国の宝である子は国が面倒を見るべきだと思います。自然に少子化は解決するのではないでしょうか。すべてはやりようだと思います。

国民がいて初めて国家ですから。やっばり人を大事にしないとね。今西郷精神を持ったリーダーが出てほしいと思います。どこかにいるんじゃないかと探してはいますが、ク大ク西郷は難しいけど″小ク西郷でもいいです。行動を起こせば後からついてくるものなので、ぜひ早川さんに期待しています。

西郷隆盛が唱えた「敬天愛人」が世界を包み込む思想だと確信しています。それを日本がモデルとなって世界に広めるべきだと思います。