西郷党BLOG

道義国家を目指した 西郷吉之助 3p018-第二章_04

道義国家を目指した西郷吉之助

第二章  道義主義

4 現代の世界の思想

世界の国々の大半は自由主義思想国家である。十九世紀マルクスにより共産主義思想が生まれ共産主義国家が成立したが、人間の持つ自由拡大の本能に抗しきれず消滅していった。マルクスの思想は素晴らしいが、政治思想として大地に植えていくには、為政者が人の持つ自由拡大の欲望を政治や経済の中に取り入れ共産主義の下支えとなる環境をつくるべきであった。

今、自由主義思想のもとで貨幣経済・資本主義思想が世界を覆っている。自由主義思想は人間の本質に添った良いものであるが、貨幣経済・資本主義が行き過ぎれば、自由競争の名のもとに富の奪い合いを国家も国民も演じなければならなくなる。歴史が示すように、戦争や貧富の格差は繰り返され続いていく。人間の自由度は貨幣の多寡で決まり、拝金主義や貨幣至上主義の風潮を生むようになった。

地球上で自給自足の生活はほとんどできなくなり、生きていくには貨幣に頼らざるを得ないのである。先進諸国でも、発展途上国でも独裁国家や宗教国家においても経済活動にはすべて貨幣が介在し、人間の生存すら貨幣なくしては不可能と言えるほどになっている。自由意志や尊厳なる人権も貨幣の支配を受け、人間の自由が貨幣経済・資本主義に隷従化しつつある。人間がそれぞれ持つ「自由という傘」を広げようとすると、混雑する人込みの中では他人の「傘」と重なったり、ぶつかったりする。人間の生存欲も含めたさまざまな欲望の衝突とも言える。自我を主張し己の正義を振り回す。自由主義のもとで際限なく膨張する個人の欲望はかろうじて、細かく規制する法律でコントロールされているともいえる。

二〇一〇(平成二十二)年チュニジアで起こった民主化の波はアラブ諸国に及んだ。「アラブの春」と称された。エジプトで起こった民主化運動はムバラク大統領を追放したが、専制政治によって抑えられていた民衆の欲望は無秩序に解き放たれことで、かえって以前より混乱をまねいている。リビアやシリアにも飛火したが、混乱と内戦を生み出しただけであった。人間の本能としての自由の欲求は、あくまでも人としての規範を根底に置かなければ、動物の自由と変わりなくなってしまうのである。

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