はじめに
人間の生きる目的と一箇の人間の偉大さを西郷を通して表現してみようと思いました。
西郷隆盛とはどういう男なのでしょうか。勝海舟は西郷を「大胆識、大誠意、大度洪量の人」と評し、一方では「西郷は、どうも人にはわからないところがあったよ。
大きな人間ほどそんなもので…小さいやつなら、どんなにしたってすぐ腹の底まで見えてしまうが、大きいやつになるとそうでない」と『氷川清話』の中で述べています。
西郷に関する書は数多くあり、さまざまな西郷像が著されています。
西郷の生きる目的は何であったのか。
また目指す人間のモデルはあったのか。
西郷の持つ勇気と人間としての大きさは多くの人を魅了してきました。
何を学びどういう修業をすればそのようになれるのか。このようなことを考えて『西郷南洲遺訓』や『南洲手抄言志録』を読むと、そこには生身の西郷隆盛が息づいています。
人間は己を訓練して高くしようと思えば、どこまでも強く大きく高くなれるという西郷による生きた実験です。明治維新という日本の大変革期に登場する西郷にとって、幕末動乱激動の時代は志を磨くためには格好の環境でした。
ひとりの人間として己がどれほどの人間になり得るか、そのことに挑戦していく。
「己の個を強く大きくせよ」。
西郷が多くの人に望む思いです。また誰でも「西郷吉之助」程度にはなれる。
これも西郷が伝えたいことでしょう。
二十一世紀の現代日本を見るとき、個性の多様化も大切ですが、その個を強くすることも必要なことではないかと思います。
「一箇の大丈夫」と題し、人間の強さと大きさと高さを求めた明治維新の英雄「西郷隆盛」を書いてみました。
平成二十二年四月二十八日