西郷が主張する道には、広辞苑に記載された道義の意味も含まれているが、それだけではない。宇宙の視点で見ると、人間も自然界の一部であり、大自然の中に含まれて存在しているのである。人間界は自然界と全く別な存在ではなく、その一部であり、人間もまた宇宙大自然の法則に従って生を育まなければならないと西郷は考える。
大宇宙の創造者、万物の創造者を天と位置づけ、天の機能を仁愛としている。
天の機能を極小まで下げると、子を産み育てる母親の行為に近いである。西郷は「道は天地自然の物にして、人はこれを行うものなれば、天を敬するを目的とす。天は人も我も同一に愛し給うゆえ、我を愛する心を似て人を愛する也」と述べている。
自由意志を持ち、権限のない欲望を抱く人間が、天の機能に添おうとすることが人の道であると主張するのである。