西郷党BLOG

道義国家を目指した 西郷吉之助 3p046-第五章_01

道義国家を目指した西郷吉之助

第五章  四海同胞

1 地球人という意識

地球は「宇宙船地球号」と称される。七十億人が乗船していることになる。宇宙から見るとまさしく地球は広大な宇宙の海に浮かぶ惑星であろう。人類は地球以外の惑星に移住もできず、「宇宙船地球号」と正に命運をともにしているのである。この狭い船内で乗客が紛争を続けていたらいつかは沈没しかねない。四海兄弟という言葉がある。これは『論語』顔淵の「四海之内皆兄弟也」(天下の人はすべて我と同一人類で、親疎のわけへだてがなく親しみあうことが兄弟のようであるの意)から出た言葉であり、また四海同胞(世界中の人々は皆兄弟のように親しい関係にあるということ)とも同意である。

二千五百年前の孔子の時代にすでに四海同胞の意識があったといえる。日本でも幕末から明治にかけて、長州人や薩摩人という藩意識から、これらを包括した日本国の日本人意識が武士階級から庶民にまで広まり定着したのである。これと同様に世界の人々が国家や民族意識から地球人意識に変わるべき時代に来ているのではないだろうか。国家や民族を意識しすぎると国家間や民族間の対立紛争になってきたことは歴史が証明している。現在においても世界各地で紛争は勃発しており、紛争の種は尽きないのである。人間の愚かさと言えばそれまでだが、この愚かさを何とかしなければならないことも事実であろう。

次に西郷の漢詩を紹介しよう。ここでは皇道を天道と理解した方が良いであろう。
西郷の考えでは、天は万民に仁愛を施さなければならない。そのため人間の組織として天子を置き、天はその職務を天子に代行させていることになる。すなわち世界各国に天道を及ぼせということになる。

宇 宙 由 来 日 赴 新    宇宙由来日に新に赴き、

数 千 里 外 已 如 隣    数千里外已に隣の如し。

願 知 四 海 同 胞 意    四海同胞の意を知らむと願わば、

皇 道 頻 敷 萬 国 民 皇道頻に万国の民に敷け。

(世界はもともと日に新たに又日に新たに進歩して来て、今日ではもはや、何千里も遠く隔たっている海外諸国がまるで隣に見たように近くなり、四海同胞という話もよく使われているが、世界中の人は昔同じ胞から生まれた兄弟同然だというこの語の真の意味をよく知りたいと思うならば、我が日本の天子様の大御心の顕現である仁慈の皇道を、しきりに世界万国の民に敷き及ぼせ)西郷が言いたいのは、表面だけの四海同胞は何の意味もない、「我を愛する心を以って人を愛する」と言えるほどの意識を持たなければ、それが実行できる人間の大きさがなければ、単なる合言葉になってしまうということである。

実際、自由・平等を唱えた民主主義国家アメリカにあっては、白人による黒人への差別が長い間続いた。人間は誰でも自己の優位を保とうと、他人を差別し偏見を持つ傾向にある。我欲のある人間にとっては当然と言わねばならない。将来、地球人類が四海同胞の意識を持ち得るか否かが、「宇宙船地球号」の運行に大きな影響を及ぼすことになるであろう。さらに西郷は自発的に人々が四海同胞の意識を持つまで待つのではなく、良いものは良いと、天道や四海同胞の意識を早く人類にあまねく敷き及ぼせと主張するのである。そうすることが人類の幸せになると西郷は言いたいのであろう。

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