おわりに
西郷という人間は日本人の誇りである。世界史にも類を見ない形の人間である。その志と思想は高く大きい。それゆえ、漠然としてとらえがたく、全体像はいまだに分かりにくく、その一部をもってつくられた西郷像が定着している。しかしながら、志と思想は『西郷南洲遺訓』の中に十分表れている。事跡を通して西郷を見るのでなく、『遺訓』を通して西郷を見ると、その事跡の行動原理が分かり全体像がだいぶ浮かび上がってくる。
アーネスト・サトウの日記を通して見えるのも、西郷の一部でしかない。現在でもまだまだ征韓論者の西郷であり、日本史の上では誤った解釈のまま定着している。西郷ファンの私としては、西郷に対する一般的な見方を少しでも、『遺訓』に表れている西郷に変えたいと思った。それが『西郷吉之助』を書いた動機である。
ウクライナとロシアの紛争や、中国とベトナムの西沙諸島をめぐる紛争など、経済が発展する中で人々はちょっとしたことで衝突や紛争を起こすようになっている。今の時代にこそ、西郷の道義的思想や哲学が世界の人々にも必要ではないだろうか。人類を包みこむような広大な西郷の思想が個人や国家に役立つはずである。
最後に、前作同様、編集の労をとっていただいた沖縄自分史センター㈱の高橋哲朗氏に感謝します。
平成二十六年七月二十日
参考文献抄
『一外交官の見た明治維新』(アーネスト・サトウ著・坂田精一訳 岩波書店刊・平成
二十三年)
『遠い崖 アーネスト・サトウ日記抄』(萩原延壽著 朝日新聞社刊・平成二十二年)
『西郷南洲先生遺訓』(財団法人西郷南洲顕彰会発行・昭和五十一年)
『西郷南洲遺訓』(山田済斎編 岩波書店刊・昭和十四年)
『西郷隆盛』(海音寺潮五郎著 朝日新聞社刊・平成十九年)
『大西郷全集 第三巻』(大西郷全集刊行会 平凡社・昭和二年)
『西郷南洲翁遺訓』(財団法人荘内南洲会 平成十六年)
『西郷隆盛』(勝部真長著 PHP研究所刊・平成十九年)
※本文中の『遺訓』の訳は、財団法人西郷南洲顕彰会発刊の『西郷南洲先生遺訓』
(口語訳付)からの引用である。
●著者紹介
早川 幹夫(はやかわ・みきお)
昭和23年5月15日、鹿児島県奄美市名瀬生まれ。
長崎東高校卒、拓殖大学卒。琉球大学で文部事務官として9年6カ月勤務。
退職後、事業を始め、現在人材派遣会社を経営。著書に『仕末に困る人 西郷吉之助』『一箇の大丈夫 西郷吉之助』などがある。
道義国家を目指した 西郷吉之助
2017年12 月18日 第1刷発行
発 行 人 早川 幹夫
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©Mikio Hayakawa 2017 Printed in Japan
ISBN978-4-88338-634-5 C0095
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